はじめに
日本は外国に比べて台風、大雪、地震などが発生しやすい土地となっています。
ここ岡山県でも平成30年7月豪雨による甚大な被害が発生しました。
そんな災害から命を守るための情報は多く発信され、防災グッズなども日々進化しています。
一方で文化財を災害から守る・助ける方法についての情報についてはまだまだ知らないことが多いのが実情です。
「文化財の保護に寄与する」と掲げた日本美術刀剣保存協会の一支部として、刀剣の被害を最小限に食い止める方法を案内したいと思います。
刀剣を災害から守るために
近年多く見られた刀剣の災害被害に「浸水」があります。
家屋に浸水の不安がある場合にはあらかじめ安全な場所への移動が望ましいです。
しかし実際には別の場所に移動させる時間がない場合がほとんどだと思います。
- 大きなビニール袋で白鞘ごと包み、しっかりと口を縛る
- 屋内の高いところへ移動させる
これだけでも家屋内での緊急避難となります。
こういった対応をすることで刀剣への被害を抑えられる可能性が高まります。
浸水被害を受けた刀剣の応急処置について
水に浸かってしまった刀剣は必ず錆びてしまいますので、できるだけ早めに専門家への相談が必要となります。
刀剣の錆はヤスリなどでは元に戻すことはできません。研師による修復が必要です。必ず専門家にご相談ください。
専門家の元に持ち込む前には応急処置をお願いします。
この応急処置は被災してから早ければ早いほど効果があります。
- 1.洗浄する
- 鞘などをすべて外し、水洗いをする。
このとき重曹を溶かしたアルカリ水で洗うのがおすすめです。
重曹がなければ真水で問題ありません。
- 2.乾かす
- 水気をふき取り乾いた状態にする。
洗浄した刀剣はすぐに乾かしてください。ドライヤーがあれば使用しても良いです。
鞘や金具類も水気をふき取り、乾かして保管して下さい。鞘が割れていても再利用できることがありますので、捨てないでください。
- 3.油を塗る
- 刀身に刀剣油を塗る。
ティッシュペーパーに油をしみこませて刀身に塗布してください。
刀剣油がない場合、ホームセンターなどで買える 呉工業の「5-56」などの潤滑剤でも代用できます。
- 4.ラップで包む
- 油を塗った刀身を食品用ラップフィルムで包む。
使用する食品用ラップフィルムは添加物がないものが望ましいです。
応急処置を施した刀剣の持ち運びの際には新聞紙3枚以上で巻き、怪我をしないように切先はガムテープで養生してください。
相談先について
日本美術刀剣保存協会には全国各地に支部があり、専門家も多く所属しています。
最寄りの支部にご相談ください。
連絡方法は電話の他、ホームページを開設している支部もありますのでメールでもご相談ください。
日本美術刀剣保存協会 – 協力団体(支部)案内
被災刀剣の事例
平成30年7月豪雨により浸水し、錆びてしまった刀剣です。
当支部にご相談頂き、綺麗な姿を取り戻しました。
研磨前(左) 研磨後(中) 研磨後にスキャナーで取り込んだもの(右)